こんにちは、福島就業支援ネットワーク事務局です。
最近は当ネットワーク主催・共催の研修やセミナーが多数開催されています。
平成30年12月16日。
この日も当ネットワークが共催するセミナーが郡山で開催されました。
皆さん、「就労定着支援システムSPIS」というのをご存知でしょうか?
私もこの日まではよく知りませんでした。SPISがどんなシステムなのかセミナーに参加してよくわかったので報告をしたいと思います。
現在、精神障がいの方の雇用が増えている中で、課題となっているのが”就労定着”。
企業の中でメンタルヘルス不調のケアの問題を抱えている現状があり、求職者の復職状況については退職に至ってしまっているケースが少なくない状況で、精神障がいの方の就労定着に視点を置いて作られたのが”就労定着支援システムSPIS”です。
このSPISが開発されてから5年間で約1500名ほどの方が現在利用したとの事で実績もあるシステムですね。
NPO法人全国精神保健職親会(vfoster)事務局 三原卓司氏
SPISの開発を辿るとシステム会社「奥進システム」と共同で開発されたものでした。
精神障がいの方を受け入れをしている会社だからこそ、このようなシステムが生まれたのだなと思いました。
また、このシステムはNPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク(以下JSN)就労支援の訓練日報をベースに雇用の現場向けにアレンジされたシステムで当事者の日々の状態を記録する日報がSIPSの土台となっているもので、その奥進システムに就労移行支援JNSを利用していた当事者が就職してSPISというシステムが作られたという事が驚きでした。
(セミナーの中では開発の話やSPISを使った支援で当事者が変わっていく姿を映像で観る事ができました)
SPISを使った支援のアプローチは医学的な病名や症状へのアプローチではなく、日々の本人の困り感などに注目してアプローチをするシステムであるという説明がありました。
そもそもこのシステムを導入するだけでは効果はなく、SPIS(web日報)を通じて当事者と複数の関係者(支援機関や雇用主など)が関わり、コミュニティー(支援プラットフォーム)を形成する事が重要との事でした。
web上のクラウドサービスを使った日報システムなので場所や時間を問われずスマホからでも活用が可能。
SPISのシステムの説明講義では実際の入力画面などを見る事ができました。
自由記述の部分には仕事の事だけにとどまらず、プライベートの事も書かれる事がある様子。
そもそもこのシステムの基本は当事者が入力した日報に企業や支援者がコメントするという仕組み。
web上のシステムの中で支援者(相談員)と企業の方とやりとりできる仕組みになっていました。
問題や困り感に対してスピーディーに対応ができる事が当事者の安心にも繋がっている事がわかりました。
”管理されている”ではなく”見守られている”安心感に繋げていく事が重要との事でした。
また、入力されたデーターが蓄積されてグラフ化されることがこのシステムの特徴で、睡眠時間などもグラフ化され、その日の天候や気圧などとも連動していてデーターを客観的に見て分析などができるようです。
また、当事者が自主的に管理するセルフチェック項目については、毎日入力するものなので支援者と相談して負担にならない5項目くらいに決めていくようです。
症状や課題はそれぞれ違い、その方にあった項目を決めていく”標準化ではなく個別化”されたシステムでした。
ここまでの話を聞いてweb上の文字でのやりとりだけでは不安!と思う方もいると思います。
しかし、しっかり1ヶ月に一度当事者・企業・支援者が実際に会って振り返りを行う「リアルSPIS」というというものがありました。
やはり定期的に顔を合わせることも重要ですね。このシステムが継続的に使っていける一つのポイントでもあると感じました。
実際SPISを活用されている当事者のアンケートでは、「見守られている安心感がある」「相談のしやすさ、コミュニケーションの幅が広がる」「自分を客観視しやすくなった」などという声が聞かれ、効果が出ている話が聞けました。
このシステムを作った当事者はシステムを作る上でこのような期待をしていたようです。
「僕が作ったのは、インターネット上で動く、日々のやり取りを蓄積するシステムです。
ですが一番大事なのは、システムそのものではなく、そのシステム上でどのようなやり取りがなされ、それによって当事者、職場担当者、そして支援者の方々の間でどのような関係が作られ、どのような気持ちの変化が起きのかという事です」
まさに期待通りの変化がこのシステムから生まれていました。
さて、この日のセミナーはSPISの説明にとどまらず、SPISを使ったコメントのやり取りを体験する演習がありました。
この研修を福島で行われた事で福島の事業所間のネットワークが深まった気がしますね。
その演習は単なるコメントのやり取りを体験するものではありませんでした。
「カウンセリングマインド」と「コーチングスキル」といった専門的な対人技術に基づいた対処方法を学ぶというものでした。
SPISは単なるweb上でやり取りするシステムではなく、しっかりとしたカウンセリング技術に基づいた「就労定着支援システム」である事が理解できました。
今回、「就労定着支援システムSPIS」の研修を受けて感じた事は、働きにくさを感じている当事者自身と障害者雇用を多数しているシステム会社とで開発されたこのシステムの”思い”と、それだけではない専門的なカウンセリング技術がしっかり備わっているとても素晴らしいシステムであるという事を感じました。当事者、開発した企業、支援者それぞれの思いが詰まった働き続けていく為のシステムである事がわかりました。
精神障がいの方を主に支援している事業所や雇用をしている企業はこのようなシステムを導入する検討をしてみてはいかがでしょうか?
投稿 福島就業支援ネットワーク事務局 今泉)