A型事業所連絡会及び研修会報告2「A型大量解雇問から取材を通して見えてきたもの」

こんにちは、事務局です。
先日一般公開で行なわれたA型事業所連絡会及び研修会の二つ目の講演の報告です。
山陽新聞社編集局重点企画取材班記者の久万真毅さんから「A型大量解雇問から取材を通して見えてきたもの」としてご講演いただきました。

冒頭、ある動画の紹介から始まりました。
そのにはカフェで働く人ではなく「ロボット」でした。
そしてそのロボットを遠隔操作しているのが、寝たきりの人だったり、重度の身体障害の方など外出することが困難な方が遠隔操作でロボットを動かしていました。
ただ単にロボットを遠隔操作しているのではなく、遠隔操作をして自宅にいながら「就労」をしていたのです。
驚きでした。ロボットの技術がここまで来ていたとは。
まさに誰も働ける時代が来そうですね。
(期間限定でロボットカフェ「DAWN」は東京・赤坂の日本財団ビルでオープンしているそうです)

さて、ここからは本題。
久万さんは、主に岡山県、福山県、愛知県でのA型の大量解雇問題の取材を続けてきて、山陽新聞で連載記事を書いていたそうです。その取材した記事の数がすごい。

一冊の図書になるくらいの量でした。
なんでも最初に取材に行った時は障害者の就労に関して無知だったし、そもそもA型って何?っていう状態だったそうです。
しかし、何度も取材を重ねていく度に理解が深まり、知りたいという気持ちが強くなっていったようです。
報告を聞いていて”障害がある人の就労”その知識量も驚きでした。

久万さんにはその取材から見えてきたものを新聞記事を見ながら報告していただきました。
主に、
・大量解雇問題の全体像
・就労継続支援A型事業の課題について
・これからどんな事が起きると予測されるか
以上の3つについてお話をいただきました。

大量解雇が起きた主なA型事業所を取材してきた久万さん。
100人を超える解雇者を出したA型事業所は全国で5件もあるという事を初めて知りました。
そして、そのほとんどの事業所で働いて利用者さんが不当に解雇され、今のなお再就職できずにいる方が多いとのことです。
また、HWからの紹介で一般就労ができた方もいるが、その後定着てきているかはわかっていないという問題もあるようです。
(山陽新聞社久万さんの資料より、100人以上の解雇問題をあじさいモデルと呼んでいる)
取材した事業所は全て100人以上の解雇者を出し、283人もの解雇者を出した事業所もあったようで、
それらの事業所に共通していたのが「自治体からの給付金や雇用した時の助成金頼みの経営」だったとの事。
肝心の仕事の内容などの中身については、単価の安い軽作業を利用者さんにやってもらっていたり、自立に向けた訓練とは程遠い実態がそこにはあったと話していました。
ある事業所のサービスを管理する職員は「利用者はお金だ」というような事を言っていたとか。
やり方はとにかく「利用者を増やす」事にあり、あの手この手で利用者集めをする。
「就職祝金3万」「自宅まで迎えに行きます」を謳い文句に利用者集めをしていた事業所があったようです。
(山陽新聞社久万さんの資料より)
そういった事業所が全国的に広がりを見せた。
そこには制度の弱さや様々なカラクリがあったと久万さんは言っていました。自治体からの給付金事業のため、安定した事業を判断した銀行からの融資も受けやすく、特に営利法人の新たな参入が全国的に増えていったとの事でした。
しかし、ただ単純に人口が多い都市にA型事業所の数が多いという訳ではないと久万さんは言う。
A型事業の普及に努めた指導員やコンサル業の存在が大きかったとの事。
実際、東京は人口の比率に対してそれほど多くない。

そのような背景から国は様々な規制を段階的に行ってきた。
結果、最初からちゃんとやってきたA型事業所も経営が厳しくなってきている現状があると久万さんはお話された。

あれだけ問題視され世間でも大きくメディアが取り上げてきたが、1年、2年経つと社会の中では風化されていってしまう。
しかし、解雇にあった当事者にとっては、人間不信になってしまったり、自信をなくして再就職を諦めてしまったりと今もなお当事者の苦しみとしてとして残っている事を認識しなければいけないと久万さんは話した。

また、近年では”あじさいモデル”のような大量解雇ではなく20人以下で事業を行っていたA型事業所が経営悪化により廃止する事業所が増えてきているとの事。
そこには”指定基準の見直し”が関係しており、全国的にも同じケースが起こっているとの事。

講演の後半に”今後どんな事が起こっていくと考えられるか”久万さんの予測の話がありました。
それは、ついこの前の省庁及び地方自治体等の公的機関においての「障害者雇用の水増し問題」の影響が今後出てくるのではないかと久万さんは予測している。
本来雇用していなかった数の障害者雇用が今後省庁や地方自治体等の公的機関への雇用と動き出していく。
A型事業所などで長年働いてきた利用者さんが自治体への雇用へ移っていくのではないか?
そうなると更にA型の継続が難しくなってくると予測している。
そして、今後の国の動向としても、障害にとらわれず生活困窮など「働きにくさ」と抱えている方への支援の事業ができてくる。
本来の障害者総合支援法のコンセプトであった「働く=雇用契約」が軸となり、福祉サービスも制度そのものも変わってくのではないかと締めた。

(投稿 福島就業支援ネットワーク事務局 今泉)

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